・自分の障害を活かした仕事をしたい
・人前でうまく話せるようになりたい
・講演会の講師になる方法を知りたい
中学校や高校では、人権教育の一環として、障害当事者を招いて、経験談や障害のことを喋ってもらうという授業があります。
ただ学校側は、障害のある講師を探すことに苦労しているという事実をご存知ですか?
つまり講演ができる障害者は、学校側においてとても貴重な存在だということです。
僕はこれまで障害をテーマにした講演会を200回以上してきました。
また現在はスポーツ心理学の専門家として、企業や病院で研修会の講師を務めています。
そこでこの記事では、大人数の前で喋ったことがない障害者が、30分間の講演ができるようになる方法と講演会の依頼を受けるコツを実体験をもとに解説します。
この記事を読めば「障害者が仕事として講演会講師をするまでの手順」がすべて分かります。
注)主に車椅子ユーザーを例に解説していますが、精神障害の方も参考になる内容です。
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初心者は中学校・高校での講演を目指そう
結論からお伝えすると、講演経験のない障害当事者は中学校や高校での講演を目指しましょう。
では具体的に説明します。
講演会とセミナー(研修)の違い
まず人前で話をする仕事は大きく2種類あります。
講演:自分の実体験をもとに伝えたいメッセージを話す
セミナー(研修):特定のテーマに沿って、ノウハウや知識を伝える
障害をテーマにした例
講演:受傷から社会復帰するまでのストーリーを通じて諦めないことの大切さを伝える
セミナー:車椅子ユーザーの困りごとと具体的なサポート方法を解説する
障害当事者に求められるのは、主に講演です。
なぜなら実体験に基づいた話は、障害当事者でないと話せないからです。
極端な話、車椅子ユーザーの困りごとは、専門的知識があれば健常者でも解説できますよね。
中学校や高校を対象にする理由
①需要がある
中学校や高校では、障害当事者を招いて経験談を喋ってもらうという授業があるものの、講師を探すことに困っている学校は、意外と少なくありません。
つまり人前で話ができる障害者は、学校側にとっても貴重な存在になります。
②実績が重要視されない
企業で講演をする場合は、メディアで取り上げられた経験などの実績が必要になることが多いです。
また企業からの講演依頼を受けるためには、会社などの団体に所属している必要があります。
つまり実績のない個人が企業から講演の依頼を受けることは不可能に近いのです。
一方で中学校や高校では、企業に比べると実績は重要視されません。
それよりも生徒たちの心に響くような話をできることの方が大切です。
以上の理由から、これから講演をしたい障害当事者の方は、中学校や高校での講演を目指しましょう。
中学校・高校で講演をするまでの手順
ここからは講演経験がまったくない人が講演をするまでの流れについて説明します。
準備編・営業編・当日編に分けて解説しますね。
準備編
①伝えたいこととタイトル案を決める
②原稿を作成する
③スライドを作成する
④話す練習する
⑤プロフィールシートを作成する
①伝えたいこととタイトル案を決める
講演は、自分の体験をもとに伝えたいメッセージを話す場です。
まずは自分の講演を聞いた生徒のみなさんにどのようなことを伝えたいのかを明確にしましょう。
💡伝えたいことの例
・幸せは当たり前な日常のなかにある
・周囲のサポートがあるからこそ困難を乗り越えられる
・人生はいつ終わるか分からないからこそ今を大切にしよう
・挑戦こそが人生を豊かにしてくれる
伝えたいことを明確にするときは、マインドマップなどで書き出しながら考えると思考が整理されますよ。
伝えたいことが明確になったら、次はタイトルを考えましょう。
タイトルは奇抜なものにする必要はありませんが、生徒のみなさんの興味を引く文言を使いましょう。
💡タイトル案の例
・僕は車椅子に乗っている。ただそれだけのこと
・車椅子生活になって気づいた人生で大切なこと
・諦めないことが人生を豊かにする
②原稿を作成する
「今から1時間喋ってください」と言われて、あなたは喋れますか?
1時間しゃべることが可能であれば、このステップは読み飛ばしてください。
もし自信がない方は、まずは自分の講演の原稿を作成しましょう。
何をテーマにするのか、構成はどのようにするのかを考えて一言一句原稿に書き起こしてください。
とても大変な作業ですが、原稿を作成することは人前でスムーズに話せるようになるための一番の近道です。
僕も車椅子ユーザーになってからのはじめての講演では、原稿を作成しそれを手元において喋りました。
③スライドを作成する
講演会では、スライドをスクリーンに投影しながら喋ることをおすすめします。
💡スライドを使うメリット
・カンペ代わりになる
・聴衆を飽きさせない
・感情を動かす演出ができる
研修会やセミナーでは、複雑な内容を理解してもらうために、スライドに説明文を入れることがあります。
一方で講演は、基本的には経験を喋る場なので、自己紹介スライド以外は、1スライドに一メッセージを意識しましょう。
また話している内容が想像しやすいように写真や画像を入れることもおすすめです。
④話す練習する
結論、練習すること!
講演本番で緊張して上手に話せない根本的な原因は、準備不足です。
一応、呼吸や視線のコントロールにより緊張の程度を下げることは可能です。
でもそれは、十分な準備をしていることが大前提。
まずは原稿の内容をすべて暗記できるくらいまで練習しましょう。
はじめは一人で練習し、少し慣れてきたら家族や友人に聞いてもらってください。
そのときに、良かった点と改善点をフィードバックしてもらい、次に活かしましょう。
⑤プロフィールシートを作成する
講演で喋るための準備が整ったら、次は営業するためにプロフィールシートを作成します。
プロフィールシートとは、自分の経歴や講演テーマをまとめたものです。
なぜプロフィールシートが重要なのか?
それは学校の先生方に依頼を承認してもらうためです。
講演の営業をして、OKをもらえるときは
「この人なら講演をお願いしても大丈夫だなと」と思ってもらえたときです。
そのためには、自分の人となりやどんなことを話せるのかを知ってもらう必要があります。
資料がない状態で「講演させてください!」と依頼しても「判断できませんよ〜」となってしまいますよね。
💡プロフィールシートに必要な項目
①名前
②経歴(本業を含む)
③障害の詳細
④講演テーマ
⑤実績
営業編
準備が整ったら、いよいよ自ら営業して講演依頼をもらいましょう。
営業経験がない人にとって何をしたらよいか分からないですよね。
そこでおすすめの方法を紹介します。
①母校の先生に聞いてみる
おすすめは母校の先生に「現在、障害をテーマにした講演活動をしています」と聞いてみることです。
繰り返しになりますが、障害を持った講師を探すことに困っている学校は、意外と少なくありません。
そのような場合「私講演できます」という提案は学校側にとってもメリットですよね。
また学校側の立場になって考えてみると、まったく面識のない人よりも、教え子の方が人柄を知っている分依頼しやすくなります。
ただ卒業してから10年以上経っていると、母校に知っている先生がいないケースもあります。
その際は、他の学校に務めている当時の担任や部活の顧問などお世話になった先生に営業してみましょう。
②別の学校を紹介してもらう
公立の学校であれば、先生方は5〜7年で別の学校に転勤します。
そのため現任以外の学校とネットワークを持っている先生は多くいます。
そのネットワークを通じて、他の学校を紹介してもらうことで、講演する機会を増やしていきましょう。
当日編
①衣装に着替える
②必要な持ち物を確認する
③余裕を持って現地に移動する
④到着後は責任者に挨拶をする
⑤講演中に緊張しないためのコツ
⑥講演後は必ずお礼のメールを送る
①服装
中学校や高校での講演では、必ずしもスーツを着る必要はありません。
むしろスーツだと生徒からお堅いイメージを持たれる可能性もあります。
一方で、プリントTシャツに短パンのようなラフ過ぎる服装は、学校という教育の場には合わないので避けましょう。
僕の場合、以前はジーンズ+シャツで講演をしていました。
最近はジーンズ+カットソー+ジャケットというオールユニクロコーデで講演をしています。
②必要な持ち物を確認する
十分な準備をしても、たったひとつのトラブルで頭が真っ白になる可能性があります。
そのため必要な持ち物は必ず確認しましょう。
💡講演会の持ち物リスト
・パソコン
・USBメモリー(スライドのデータを入れたもの)
・HDMIケーブル
・変換アダプター(PCにHDMI端子がない場合)
・ポインター
・印鑑(講師料の手続きで必要)
自分のパソコンを持参する場合であっても、トラブルに備えて学校側でもパソコンを1台準備してもらうことをおすすめします。
③余裕を持って現地に移動する
時間の余裕の無さは、気持ちの焦りに繋がります。
そのため移動はトラブルがあることを前提にゆとりのスケジュールを考えましょう。
特にはじめて行く場所であればなおさらです。
僕は待ち合わせの30分前に現地に到着するように移動し、近くで時間をつぶすようにしています。
講演で現地へ移動する場合、交通費は基本的に依頼側である学校が負担します。
ただ学校によっては、こちらから聞かないと交通費を出してくれないこともあります。
その際は「交通費の負担はお願いできますか?」と尋ねるようにしましょう。
④到着後の流れ
学校に到着すると、講師控室か校長室へ案内されることが多いです。
そこで講演会場へ移動するまでの時間を過ごすことになります。
校長や教頭などの責任者と挨拶する場合は、名刺交換をすることが多いので、一通りのマナーは知っていた方が良いかも知れません。
とはいえ、ビジネスの場ほど堅くはないので、元気よく挨拶をすれば問題ありません。
またこの時間に講演会担当の教員がパソコンのセッティングをすることになります。
もしパソコンのセッティングに立ち会いたい場合は、一緒に講演会場へ移動してください。
⑤講演中に緊張しないためのコツ
講演が始まったら、練習通り話を進めます。
ここで僕が緊張しないために実践していることを紹介します。
1)最初は0.7倍速くらいゆっくり喋る
人は緊張すると早口になります。
逆に早口で喋ると緊張してくるということはご存知ですか?
心と身体は繋がっているので、身体(喋り)を変えれば心(緊張)の状態も変わります。
つまり意識してゆっくり喋るようにすると、気持ちが落ち着いてきます。
この仕組みを利用して、緊張しやすい冒頭部分は意識的にゆっくり喋ることで緊張をやわらげることができますよ。
2)リアクションの良い生徒を見つける
「大勢の前で喋る」と考えるとプレッシャーを感じますが、一人に対して喋る場合はどうですか?
基本的に講演も目の前の一人に話すという意識で構いません。
そこで講演中に、一生懸命話しを聞いてくれる生徒を探しましょう。
30人くらいの生徒数であれば、必ず一人は一生懸命に話しを聞いてくれます。
その生徒を見つけたら、その子に気持ちを伝えるように話してみてください。
不思議ととても喋りやすくなりますよ。
⑥講演後は必ずお礼のメールを送る
無事に講演が終わったら、その日に次の2点をしてください。
1)お礼のメールを自分から送る
帰りの道中に、担当者の先生と校長先生に講演の機会をつくってくれたお礼をメールで伝えてください。
ポイントはできるだけ早いタイミングで送ることです。
理由は、早いタイミングで送ったほうが相手の印象に残りやすいからです。
印象が良ければ、毎年講演の依頼をしてくれたり、他の学校に講師として推薦してくれることがあります。
目の前の依頼主に120%貢献することが次の仕事に繋がるということを忘れないでください。
2)SNSやブログで講演会報告を書く
自分が講演会を実施したということをSNSやブログで報告しましょう。
ネットで発信することでフォロワーから「頑張ってるなぁ」と思ってもらえるだけでなく、「自分の学校にも来てほしいな」と講演の依頼に繋がる可能性もあります。
実際に僕は、Twitterで講演会の報告をしたことで、DMで新規の講演依頼が届いたことが何度もあります。
「自分は講演活動をしているんだ」ということは自ら発信しないと周囲に知ってもらえないということを忘れずに。
活動の場を広げる編
講演回数が50回を超えて、自信と実績がついてきたら活動の場を広げましょう。
活動の場を広げることで、教育機関以外の場で講演ができたり、講師料の単価をアップさせることができます。
僕の場合だと、生命保険会社の研修会や医療系の学会で基調講演の依頼を受けたことがあります。
では活動の場を広げる方法を具体的に解説します。
①SNSで発信する
SNSは無料で自分のことを発信できる最強ツール。
SNSがない時代は、ブログで発信することができたものの、ブログはSNSに比べて拡散力がないため、見知らぬ人に見つけてもらいにくいです。
講演活動の場を広げるという目的に適したSNSは、facebookとTwitterです。
特にfacebookは必ず利用しましょう。
💡facebookをおすすめする理由
・実名登録必須なので、対面式のビジネスの延長で利用できるから
・利用者の年齢層が高く、ビジネスマンが多いから
TwitterはSNSの中でも拡散力に優れています。
そのため、自分の知名度を広げるという目的で運用しましょう。
Twitterのプロフィール名も必ず実名を入れてください。
なぜなら実名だとGoogleなどの検索エンジンで、あなたの名前を検索した時にTwitterアカウントが上位表示されるからです。
②専門性を高める
学校の人権講演会であれば「障害当事者」という肩書だけで講演の仕事をいただけます。
しかし、企業の研修会や団体主催の講演会で講師をしたいなら、「障害当事者」以外の実績や専門性、あるいは珍しい経験がなければ難しいでしょう。
たとえば僕の肩書や実績は以下のようなものがあります。
・大学教員
・博士号(スポーツ科学)取得者
・スポーツメンタルトレーニング指導士(日本スポーツ心理学会認定)
・心理学の研究者(論文多数)
・合同会社代表取締役
・登録者8万人のYouTuber
・SNSの総フォロワー数10万人
・大学のアメリカンフットボール部のヘッドコーチ経験者
・元文科省管轄団体採用の研究者
今では、心理学やSNSマーケティングをテーマにした研修会で講師を務めることもありますよ。
また障害当事者に加えて専門性があると市場での価値が高まります。
たとえば僕は「中途身体障害者の心理とサポート方法」というテーマを実体験と研究の両面から話すような講演をすることがあります。
この内容は、障害当事者に加え心理学の研究者という専門性があるからこそ話せる内容ですよね。
つまり専門性の高い障害者は、それだけで貴重な人材になることができます。
③講師派遣サイトに登録する
①と②ができている人は、講師派遣サイトに登録するという方法もあります。
講師派遣サイトとは、講演やトークショーのスピーカーを紹介してくれるサイトです。
自分で集客することが難しくても、講師派遣サイトが代わりに集客してくれるというイメージです。
講師派遣サイトは、テレビに出演するような有名人が講師として登録されているため、知名度や専門性のない講師には適していません。
ただ講師派遣サイトには、カテゴリー別講師というページがあり、「障害」「福祉」「介護」などのカテゴリーがあります。
障害当事者に加え何か専門性があれば、講師派遣サイトを活用するという選択肢も考えてみてください。
講演活動についてよく聞かれる質問
Q.講師料はどのように決めていますか?
講師料は、講演か、研修か、セミナーかなどの種別、かかる時間によって決めています。
今の僕は、企業相手の場合90分の研修で10〜15万円ほどいただいています。
ただ相手の予算もあるので、実際は10万円を切ることもあります。
特に行政や教育機関では、そもそも講師料の基準が決まっており、高くても5万円ほどです。
ちなみに講演活動をはじめた最初の頃は、相手に講師料を決めてもらっていました。
中学校や高校だと50分の講演で5,000円ほどだったと思います。
Q.人前で緊張せずに話すコツはありますか?
これは練習あるのみです。
練習せずに本番だけうまくいくことはありません。
緊張してもうまく話せるようになる最短ルートは、原稿を作ることです。
うまく書けないことは、人前でうまく話せません。
原稿作成は手間のかかる作業ですが、長期的に見ると「やってよかった」と思えますよ。
Q.講演の依頼を多くもらうためにはどうしたらいいですか?
結論、講演の参加者を120%満足させることです。
講演の新規依頼は多くの場合、紹介によるものです。
あなたはどのような講師なら他の人に紹介しようと思いますか?
きっと講師料として支払った額以上の感動や学びがあった場合だと思います。
目の前の人を全力で満足させることが、結果的に次の仕事に繋がりますよ。
障害がある人こそ講演会講師を目指しましょう。
ここまで紹介した内容を実践すると、間違いなく中学校や高校で講演をすることができます。
講演活動は、自分の障害があるからこそできる数少ない仕事のひとつです。
ある意味、障害を価値に変えられると言えるでしょう。
障害があると、周囲から助けて貰う機会が多くなりますが、講演活動を通じて社会の役に立てるようになると自信もついてきます。
この記事を参考にして、はじめの一歩を踏み出してみてください。
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